東京から国会議事堂前までの散歩で日本水準原点を含む一等水準点を8点発見!

日本における標高とは、東京湾の平均海面からの高さです。

明治24年5月に、霊岸島の水位観測所における平均海面から24.500mのところに印をつけて、この印を日本水準原点に定めました。日本全国の標高は、この日本水準原点との高さの差から求めています。24.500mという値は、明治24年5月という理由で選ばれました。しかし、地震などの影響により、水準原点の標高は、平成23年10月21日から、24.3900mに改正されています。

今日は、日本の水準点観測の要である霊岸島の水位観測所から日本水準原点に至るルートの周辺を散歩しました。

事前準備

散歩に出る前に、標高の測り方と、対象地域周辺の一等水準点を確認しました。

標高の測り方

水準点(一等)の測り方は次の通りです[1]。

1)高度差をはかりたい場所に、それぞれ、3mの標尺を鉛直に立てる
2)標尺の中央にレベルを水平に設置し、両標尺の目盛を0.1mmの単位で読む
3)レベルと標尺の距離は50m以内とする
4)水準点間の距離は2kmとして、往復観測を実施する
5)2km(=S)の場合、往復の誤差が3.5mm(2.5×√S)以内とする

2kmを往復すると4km。標尺と標尺の間は最高で100mなので、40回の測定が必要です。その回数をこなしながら、誤差を3.5mm以内にしなければならないのですから、大変です。測量は神経を使う仕事ですね。

対象地域周辺の一等水準点

国土地理院のページに【基準点成果等閲覧サービス】があって、各種基準点を調べることができます。

霊岸島の水位観測から日本水準原点までの間には、銀座3丁目と築地4丁目にそれぞれ【15-001】と【交7-7】という一等水準点があることが分かり、そこを散歩コースに入れることにしました。

大根役者発祥之地?

本来の趣旨からいえば、霊岸島の水位観測所から散歩を始めるべきところです。でも、前回、霊岸島から東京駅まで散歩してきていたので、東京駅から出発することにしました。

グランルーフ

「光の帆」をモチーフとしたペデストリアンデッキのグランルーフ

銀座方面に向かいたいので、八重洲口を出て、駅に沿って南下しました。すると、上に登る階段がありました。試しに上ってみると、ペデストリアンデッキ(空中歩廊)になっていました。グランルーフという名前がついています。

前回の散歩を記事にした「霊岸島水位観測所を発見!」の中で、東京駅の外観を「日本人らしくない設計だ」と書きました。今回調べてみると、グランルーフは、ドイツ系アメリカ人のヘルムート・ヤーンによって設計されていました。やはり、外国人による設計だったのです。直感も、まれに当たるものです。

江戸歌舞伎発祥之地

江戸歌舞伎発祥之地

鍛冶橋の交差点を渡り、そのまま鍛冶橋通りを通って中央通りに出ます。右折して、しばらく行くと、【江戸歌舞伎発祥之地】の碑がありました。

京橋大根河岸青物市場蹟

京橋大根河岸青物市場蹟

近づいて、由来を読んでいると、右手に【京橋大根河岸青物市場蹟】の碑もありました。今はオシャレな京橋や銀座も以前は大根をメインに商うようなところだったんですね。

そういえば、大根役者という言葉があります。語源には諸説があるとのことですが、この地では歌舞伎と大根が揃っているので、ここが大根役者発祥之地かもしれません。

松屋銀座の前で一等水準点【15-001】を発見!

一等水準点【15-001】の設置状態

一等水準点【15-001】の設置状態

京橋あたりではまばらだった人波も、銀座3丁目あたりになるとひどく混雑してきます。
そんな中で、植え込みの角に一等水準点【15-001】を発見!国道15号線の日本橋から数えて最初の水準点なので、15-001という名前です。

水準点は、花崗岩でできていると思っていたので、金属標は、なかなか視界に入ってきませんでした。保護石の代わりは、タマリュウのような植物だし。

ただ、周辺の石には001と大きく書いてありますね。

この15-001は、霊岸島の水位観測所からの直線距離が約1.5km、日本水準原点からの直線距離が約1.8kmであり、双方から2km以内を満たす唯一の一等水準点です。したがって、現在の日本水準原点の標高の確認にはこの水準点が使われているのではないかと推定しています(個人的推定です)。

采女橋東の交差点付近で一等水準点【交7-7】を発見!

築地えとビルの戌のレリーフ

築地えとビルの戌のレリーフ

松屋に沿って左折し、首都高速を越えた次の道の角に、干支のレリーフが壁に並べてあるビルがありました。築地えとビルです。新年も近いので、戌(いぬ)の写真を撮りました。

築地えとビルに沿って南西に左折し、国立がんセンターに付き当たったら右折すると、采女橋東の交差点に至ります。この付近に一等水準点【交7-7】があるはずなんですが、こちらもなかなか見つかりません。

一等水準点【交7-7】の設置状態

一等水準点【交7-7】 の設置状態

実は地下に埋まっていました。手前の丸い鉄蓋に、日本地図と測量している人の絵が描かれています。

水準点の名前については、水準路線が交わっているために「交」の文字がついているようです。7-7についてはよくわかりません。

鉄蓋には「基本」と書かれていました。また、文献[1]にある一等水準路線図の首都圏の図に、この水準点が記載されています。よって、重要な水準点の一つであることは間違いなさそうです。

ちなみに、写真の後方には犬矢来(いぬやらい)があります。僕が東京で犬矢来を見かけたのは2度目です。

一等水準点群を発見!

いよいよ日本水準原点を目指します。

財務省

財務省

日比谷公園の脇を過ぎると財務省が見えました。思ったよりシンプルな外観です。

潮見坂

潮見坂

そこから先は潮見坂。ここで標高を一挙に10m以上稼ぎます。やや右手に国会議事堂が見えてきました。

一等水準点【丁】の設置状態

一等水準点【丁(てい)】の設置状態

国会前庭に着き、一等水準点【丁(てい)】を探します。

これは、自分の良く知る水準点の外観をしていたので、すぐに見つかりました。

少し先には皇居の桜田濠が見えます。濠の手間の道は国道20号線。旧甲州街道でもあります。柳の井戸のあたりですね。

散歩をしていると、昔に造られた構造物にしばしば出会います。今回、甲州街道を歩き始めてすぐ、四谷見附跡の石垣に出会いました。都会の真ん中に残る...

手前には、なぜか竹ぼうきが転がっていました。

他の一等水準点は、坂を約6m登ったところにあります。

一等水準点【乙】の設置状態

一等水準点【乙】の設置状態

先ずは草むらの中にある【乙】を発見!

一等水準点【丙】の設置状態

一等水準点【丙】の設置状態

続いて、水準原点近くの【丙】を発見!

一等水準点【甲】の設置状態

一等水準点【甲】の設置状態

さらに、水準原点のほぼ正面にある【甲】を発見!

一等水準点【戊】の設置状態

一等水準点【戊(ぼ)】の設置状態

そして、憲政記念館のすぐ近くに【戊(ぼ)】を発見!

先ほどの干支のレリーフは戌(いぬ)であり、こちらの戊(ぼ)は横棒が一本少ない漢字です。

東京都には6点の基準水準点が定められています。基準水準点は水準原点の次に重要な水準点です。ここで示した甲~戊の5点は、基準水準点です。すごい密度です。

残りの1点は、八王子にあります。高尾山口駅から出た京王高尾線が、トンネルに入る直前の左側にあります。

実は、一等水準点は全国に13,722個あり、ほぼローソンの店舗数と一緒です。見つけてもあまり珍しいことではありません。東京都内の基準水準点を6点中5点見つけた方がよほど珍しいことです。でも、基準水準点で検索をかける人は少ないので、記事のタイトルには一等水準点を使いました。

ちなみに、二等水準点は全国で3,111点。一等水準点の1/4以下の点数ですね。二等の方が珍しいです。

この関係は、三角点の場合と異なります。一等三角点は975点、二等三角点は5,028点で、二等は一等の5倍以上です。

一等水準点と二等水準点は、数値の分解能が異なります。一等水準点は0.1mm単位、二等水準点は1mm単位で測量成果が示されます。

基準水準点に関する仮説

基準点を発見した後は、反時計回りに国会議事堂に沿って歩き、国会議事堂前から帰りました。

途中、首相官邸も見えたので、写真を撮りました。でも、逆光でピントが合わなかった上、太陽が映り込んで、とんでもない写真になってしまったので、掲載していません。

その代わりと言っては何ですが、基準水準点に関する仮説をいくつか立てて考察してみました。ただし、計算ミスがあるかもしれません。

鉄蓋を造った時期はバラバラなのではないか?

今回見つけた一等水準点について、拡大写真を記事の一番上にまとめました。それらの写真をまとめている最中に、次の仮説に至りました。

1)【甲】と【戊】の鉄蓋は一緒に造った
2)【乙】と【丙】の鉄蓋を造った時期は互いに異なるし、(1)とも異なる

【甲】と【戊】の鉄蓋のフォントは、ゴシックです。でも【乙】と【丙】の鉄蓋のフォントは明朝です。一緒に造るのであれば、フォントをわざわざ変えないはずです。

【甲】と【戊】のゴシックフォントについては、ほぼ同様で、見分けがつきませんでした。よって、一緒に製造したと考えられます。昔に造られた【甲】の蓋が傷んだので、【戊】の蓋を造るときに一緒に新調したのではないでしょうか?

【乙】と【丙】の明朝フォントはかなり似ています。でも、【乙】の方が、横画が細いです。よって、造った時期は異なると考えられます。

【日本水準原点】と【甲】は磁北線に沿っているのではないか?

基準点成果等閲覧サービスの地図を見ると、【日本水準原点】に対して、【甲】はやや西寄りの北に位置しています。そこで、【日本水準原点】と【甲】を結んだ直線は、磁北線を示すとの仮説を立てました。

緯度・経度からこの偏りの角度を計算したところ約4度。磁北線は約7度の偏りがありますので、残念ながら、磁北とは関係なさそうです。

【甲】【乙】【丙】は正三角形の頂点にあるのではないか?

基準点成果等閲覧サービスの地図を見ると、【甲】【乙】【丙】は正三角形の頂点にあるように見えます。

これについても、緯度・経度から相互の距離を計算してみました。結果は、(乙-甲:丙-乙:甲-丙)=(19.5m、22.4m、20.2m)。かなり正三角形に近いものの、正三角形ではないようです。

【日本水準原点】と基準水準点の標高を直接比較できるのか?

【甲】の状態を示す写真において、水準原点との中間あたりに円柱形の石があります。これは【日本水準原点】【甲】【乙】【丙】からほぼ等距離にあり、ここにレベルを備え付ければ相互に直接比較することが可能になると考えられます。

【丁】については、【日本水準原点】との標高差が7.77mあるので、3mの標尺では直接比較することができません。

【戊】については、【日本水準原点】との距離が91.7mと計算されるので、レベルを適当な位置に置くことにより、直接比較ができると考えられます。

散歩データ

コース:JR東海道線 東京駅 → 日本水準原点 → 東京メトロ丸ノ内線 国会議事堂前駅
距離:6.7km
時間:1h39m

参考文献

[1] 国土交通省国土地理院:一等水準点検測成果集録、第59巻、平成28年3月

[2]基準点設置点数一覧表:<http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/detail/refpoint.html>

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